デプレの指輪
- 2021/08/06
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この造形的でスタイリッシュなリングはフランスのデザイナー、ジャン・デプレ(Jean Després 1889-1980)の作品です。彼はアールデコ・ジュエリーのデザイナーとして知られていますが、このリング、実は一般的なアールデコ・デザインと比べてみるとより革新的でアヴァンギャルド(前衛的)なテイストで仕上げられた独特のスタイルであることが分かるかと思います。
1920年、30年代、カルティエ、モーブッサン、ブシュロン、ショーメ、そしてヴァンクリーフ&アーペルといったエスタブリッシュされていたオト・ジョアィエ(Haute Joaillerie)に対して、デプレやレイモンド・タンプリエ、ジョルジュ・フーケらイノヴェーター達はそれからの離脱を目的とした新しいアールデコ・ジュエラーでもあったのでした。当時のマニッシュ・ファッションやトリミングされたヘアースタイルにマッチするデザインをジュエリーにも追求しようと誕生したのが彼らの製作する作品群でした。デプレはキュビスムのジョルジュ・ブラックやミロ、ピカソといったアーティストとの親交で彼一流の美学を創り上げていったのでしょう。
この18金素材のリング、GとDのイニシャルをモノグラム化、彼流の美学によってデザインされています。アールデコ・モティーフのデザイン源泉のひとつに航空機や自動車などの部品といった機械の一部分がありますが、このリングにもその影響が見られるかもしれません。リング内側にはデプレのサイン、メーカーズマークのJDもきちんと打刻されていることでコレクターズアイテムとしてもとても魅力的な作品といえます。
アンディ・ウォーホルがデプレ作品のコレクターであったことは有名ですが、パリの近代美術館やニューヨークのメトロポリタン美術館にもジャン・デプレの作品が収蔵、展示されています。ちなみにこのリング、2005年にパリで入手以来約16年間、秘蔵してきたものです。“アンティークと20世紀ジュエリー”第4版(p.134)にも掲載されています。
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