アンティークジュエリー専門店 ギャラリートイダ銀座

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  • ユーゲントシュティールの一品

  • 2020/08/07
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    ひとつのカボション・ブルーサファイアとふたつの天然ハーフパールをセットした、ややマットな風合いのゴールドのブローチです。

    ケルトの紐帯(ちゅうたい)様式をデザインしたこの作品、アールヌーヴォーというよりむしろドイツやオーストリアのユーゲントシュティール(青年様式)や英国のアーツ&クラフツ様式といった方が良いかもしれません。絡み合うような帯のデザインは植物や燃え上がる炎、そして羽毛などにも見えますが、同時にその昔のルネッサンス期の鉄細工装飾をも想起させます。

    製作工房はロンドンを拠点とした名門ジュエラー、マール・ベネット商会(Murrle, Bennett&Co.)で、とりわけこのようなアールヌーヴォー様式のジュエリーを多く発表していました。そのほとんどはドイツ・フォルツハイムにあった工房で製作されたといわれています。フォルツハイム生まれのアーネスト・マールは1880年頃に渡英、1884年にパートナーである英国人のベネットと創業します。オリジナルのジュエリーだけではなく、リバティ商会とコラボレートしていたアーチボルド・ノックスデザインのキムリック作品を製作したり、ドイツのテオドール・ファーナ商会のデザイナー作品なども手掛けていました。これで納得がゆきました。この作品にはユーゲントシュティールやウィーン分離派デザインの“匂い”があることに。

     

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    シルバー素材のジュエリーも多かったマール・ベネット商会のジュエリーですが、このブローチは15金、そしてMB&Co.のメーカーズマークが打刻されています。でも入手した時、15金にしては少しばかり重たいような気がして帰国後知り合いの業者に調べてもらった結果やはり22金でした。しかも針部分も18金。アンティークにはたまにあることで特に驚くことではないのですが、その昔はゴールドの精錬が未熟であったことなどからこんなことがあったそうです。

     

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    そういえば滞英中、このブローチを入手した数日後そのディーラーから一言ありました。「あの仕入れ、実はもっと高かったんだよ!クオリティは高いし損したよ!!もう差額をよこせとは言わないけど日本では高く売りな。」と・・・でもこの会話は22金製という事実が判明する前のロンドンでのこと、私たちはその仕入れに準じた適正なプライスで販売することにしました。もちろん未だにその英国人ディーラーには“告白”してはいません。22金だったという“真実”を・・・