三つの指輪
- 2019/10/26
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この3本のダイアモンド・リング。一見何の変哲もないシンプルなデザインですが、実はセットされているダイアモンドに“ある共通点”があります。それはリングがつくられた20世紀より以前にカットされたダイアモンドだということです。上のセヴンストーンリングにはクッション型のオールドマインカット7石が横並びにホワイトとイエローの18金の台座にセットされています。インドかブラジル産であろうダイアモンドそのものは古く18世紀にカットされ、1930年から40年代にリングに生まれ変わったものと思われます。右の3石リングはとても興味深いジュエリーです。中央には横長のクッション型をした18世紀のオールドマインカット・ダイアモンド。左サイドにはバゲットカット、右にはスクウェアカットという20世紀に入ってから誕生する、いわゆるステップカット・ダイアモンドがセットされています。元の持主は古くから代々伝わる中央石を英国のどこかのジュエラーに持込みリングにしたのでしょう。ホワイトゴールドの台座は相当に使い込んだせいかシャンクがかなり摩耗していて、持主がいつも着用していたお気に入りのリングだったと想像してしまいます。つくられたのはおそらく1940年頃、実に魅力的なリングのひとつです。そして三つ目のリングは3石共古いオールドマインカットを用いた1920年頃につくられたモノと考えられます。このリングには石座一部に摩耗が見られ、持主は他のリングと“重ね付け”していたことが伺われます。
“宝石とジュエリーは土地と建物の関係に似ている”と諏訪恭一さんは語っています。土地に中古がないように宝石にも中古はありません。でも土地に建てられた家屋や建物は古くなると建て替えられます。18世紀のダイアモンドに20世紀の台座、まさにこの土地と建物の関係に相似しています。
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