上官の妻に贈られたスウィートハート・ブローチ
- 2020/06/05
“レジメンタル・ブローチ”という名称を耳にしたことがありますか。“レジメンタル”は連隊の意味で、連隊に関連する勲章や装身具などを指します。英国王室に従属する連隊への入隊や戦地への赴任時に、故郷に残してきた妻や恋人、母親や家族に愛の証として贈るミリタリー・スウィートハート・ジュエリーもそのひとつです。このブローチ、上部には王冠、中央には赤いエナメルが施された薔薇の花。周囲のロイヤルブルーのエナメルのリボンには「HAMPSHIRE YEOMANRY CARABINIERS」の文字、さらにその下には「SOUTH AFRICA 1900-02」と記され、2挺のライフル銃とかなり凝ったデザインです。 1900年、第2次ボーア戦争で南アフリカのケープタウンに赴く英国ハンプシャ―義勇騎兵団の騎銃兵の妻たちに贈られたものと思われます。王冠は英国王室を表し、薔薇は英国国花です。2019年に日本で開催されたラクビ―・ワールドカップで英国代表選手のジャージの胸にこの薔薇の花が燦然と輝いていたのは記憶に新しいところです。このブローチを製作したのは英国王室御用達のジュエラー、ガラード商会です。シルバー素材のスウィートハート・ジュエリーが一般的ななかでプラチナやゴールド、さらに貴石をふんだんに用いた作品は決して多くはなく、隊員の中でも階級の高い上官向けでした。当時の共箱にしっかりと収納されていたことで保存状態もとても良好です。本来は女性が身に着けるブローチですが、男性のコレクターが多いのも頷けます。お洒落の仕上げにいかかでしょうか。
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